解散手続き基礎知識
前回は、清算会社の税務手続きの流れについて見てきました。
今回は、もう少し詳しく税務手続きの内容について見ていきましょう。
会社解散届
会社が解散した場合、遅滞なく解散した旨を税務官庁に届け出なければならないとされています。
なお、この届出は、法人税(税務署)と地方税(都税事務所)のそれぞれについて行わなければなりません。(ただし、届出書の様式は、いずれもほぼ同じ内容です。)また、この届出書には、解散登記後の会社謄本(登記事項証明書)を添付しなければなりません。
確定申告・その1(解散事業年度の確定申告)
会社解散後の最初の税務申告は。この解散事業年度の確定申告になります。
解散前の事業年度開始の日から解散日までをひとつの事業年度とみなし、当該期間の確定申告を、解散の日の翌日から2カ月以内にしなければなりません。
なお、この確定申告書の提出期限には、「1カ月延長の特例」が認められています。
確定申告・その2(清算事業年度の確定申告)
清算会社は、清算期間中の各事業年度については、事業年度終了の日(通常の事業年度でいう決算期)の翌日から2カ月以内に確定申告しなければなりません。
ただし、残余財産化確定した日の属する事業年度については、以下の残余財産確定事業年度の確定申告の対象となります。
これにも「1カ月延長の特例」が認められています。
確定申告・その3(残余財産確定事業年度の確定申告)
残余財産が確定した時は、その日の属する事業年度開始の日から確定日までの確定申告を、確定日の翌日から1カ月以内にしなければなりません。
なお、この確定申告には、「1カ月延長の特例」が認められていません。
清算結了届
清算会社は、清算結了の登記が完了した時には、遅滞なくそのことをを税務官庁に届け出なければならないとされています。
なお、この届出書には、清算結了登記後の閉鎖謄本(登記事項証明書)を添付しなければなりません。
この届出により、清算会社の税務手続きは完了します。
貸借対照表
解散時に作成する貸借対照表は、財産目録に基づいて作成します。
そのため、この貸借対照表に記載する、会社財産の価格は、清算価格(時価)ということになります。
貸借対照表の様式は、資産の部・負債の部・純資産の部と、3つの区分に分けたものになります。
なお、資産の部と負債の部については、その内容を示す適当な名称を付した項目に細分化することができます。
なお、清算価格(時価)を付すことが困難な資産がある場合には、その財産の評価方針を注記しなければならないとされています。
監査役の監査
通常の事業年度で作成する計算書類には、監査役設置会社の監査役の監査を受けなければなりませんが、解散時に作成する計算書類については、監査役の監査を受ける必要はありません。
計算書類の開示
解散時の財産目録・貸借対照表については、株主総会の承認を受けなければなりませんが、通常の事業年度と違い、総会の招集通知に添付する必要もありませんし、本店所在地に備えおいて株主や債権者に開示する必要もありません。
税務申告用計算書類
清算会社は、直近の事業年度開始の日から解散日までの確定申告をしなければなりません。
この場合の確定申告書には、通常の事業年度の方法(取得価格ベース)によって作成した計算書類を添付しなければなりません。
社解散時に作成する計算書類である財産目録と、貸借対照表について、詳しく見ていきます。
財産目録
財産目録とは、資産と負債の明細のことを言います。
財産目録に計上すべき財産は、原則として清算価格(処分価格・時価)を付さなければならないとされていますが、清算価格が不明な資産については、取得価格等で計上することも認められています。
以下では、主要な科目について清算価格を計算するうえでの留意事項を確認していきます。
・預金
解散日までの経過利息を未収入金に計上します。
・金銭債権
個別債権残高から貸倒見込額と取立費用を引いた価格とします。
また、貸付金については、解散日までの経過利息を未収入金に計上します。
・棚卸資産
売却可能価格から売却費用を引いた価格とします。
・有価証券
市場があるものは、時価から売却費用を引いた額とします。
市場がないものについては、処分可能価格から処分費用を引いた価格とします。
・前払い費用
契約解除により現金回収が見込まれる部分を未収入金に計上します。
・仮払金
現金回収が見込まれる部分を未収入金に計上し、その他は0(ゼロ)評価とします。
・土地(借地権)
時価から処分費用を引いた額とします。また、建物を取り壊して土地を売却する場合には取り壊し費用をさらに控除します。
・その他有形固定資産
処分可能価格から処分費用を引いた価格とします。
・無形固定資産
原則として0(ゼロ)評価とします。
ただし、処分可能なものがあれば、処分可能価格から処分費用を引いた価格とします。
・繰延資産
会社法上の繰り延べ資産については0(ゼロ)評価とします。
税務上の繰り延べ資産については、契約解除により現金回収が見込まれる部分を未収入金に計上します。
株主総会決議による解散
会社が解散する場合、株主総会決議によって解散するのが最も多いパターンだと思いますので、今回は株主総会決議について解説したいと思います。
まず、解散の決議は、定時株主総会ですることもできますし、臨時株主総会ですることもできます。
次に解散決議の決議要件ですが、解散は株主にとってきわめて重要な事柄になりますので、特別決議によらなければならないことになっています。
特別決議の要件とは、次のようなものです。
総株主の議決権の過半数を有する株主が株主総会に出席し、その議決権の2/3以上を有する株主が解散について賛成すること
なお、株主総会を開催しようとするときは、原則として会日の1週間前までに株主に対して招集通知を発送しなければなりません。
この招集通知には、「総会の日時」「場所」「議題(解散する旨)」を記載しなければならないことになっています。
また、この招集手続きは株主全員の同意があれば省略することも可能です。
株主総会議事録
株主総会を解散した時は、議事録を作成しなければなりません。
この株主総会議事録は、解散の登記を申請する時にも使用することになります。
臨時株主総会議事録 日 時 平成○○年 ○月 ○ 日 取締役 解散太郎 は議長となり、開会を宣し、直ちに議事に入った。 第1号議案 当会社解散の件 議長は,解散のやむを得ざるに至った事情を詳細に説明し,賛否を求めたところ, 第2号議案 解散に伴う清算人選任の件 議長は,解散に伴い清算人に次の者を選任したい旨を総会に諮ったところ,全員 清算人 解散 太郎 以上の決議を明確ならしめるために、この議事録を作成する。 平成 ○○ 年 ○ 月 ○ 日
株式会社会社解散・会社清算手続きセンター 議事録作成者 解散 太郎
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