過去に作った休眠会社について
我が国では会社を作る際の最低資本金規制が事実上廃止され、資本金1円の株式会社が作れるようになってもう10年以上経ちます。
最近ではウェブサイトに書いてある情報や書式をみて、独立開業を考えたりちょっとした副業のために会社を一つ作ってしまった、という人も多いのではないでしょうか。
気軽に作った会社でも、作った人がなくしてしまうまでは存続しています。では、会社をなくしてしまう、つまり解散させたほうがいいのはどんな場合か考えてみましょう。
そもそも会社は解散以外の理由でなくなることはあるでしょうか?たとえば債務超過になって破産する場合は、裁判所へ申し立てた破産の手続きが終わったときに、会社もなくなります。借金があって倒産するという場合でなければ、解散によってしか会社を消滅させることはできません。
ただし、一定期間役員改選の登記申請がないなど会社法所定の登記手続きがなされていない会社について、会社の登記を扱う法務局が職権で会社を解散させることがあります。これは会社法や商業登記法の制度の変更によっても会社が消滅させられる可能性を示すものですが、このようになる会社は事業をすることなく休眠しているはずです。
倒産や解散のほかには、その法人格を人に譲ってしまって手放すということもできます。株式を全部他人に譲って、会社名(商号)も社長(代表取締役)も変えてしまうことができますので、この場合は解散をせずに自分の会社をなくした、ということになります。解散手続きにも費用はかかりますので、会社を人に譲れるならそうすることも魅力的な選択です。
では、会社を人に譲ることもできず、倒産することもない場合で会社を解散させたほうがよいのはどのような場合でしょうか。一般的なのはその会社で事業を営んでいないか個人事業主としてすべての事業を引き継げる場合です。すべての会社は赤字であっても毎年、法人住民税の納付が必要です。会社を解散させれば法人住民税もはらわなくてよいので、事業規模が小さいなら会社を解散させてもよいことになります。
もう一つは、全く別の会社で事業をやり直したい場合かもしれません。会社をいったん設立すれば、会社の本店所在地や会社名、役員の名前に加えて代表者の住所が商業登記として公開されます。会社の登記事項証明書をとれば、役員になった家族の名前や社長の住所がわかってしまうのです。これが好ましくない場合は、あえてその会社を解散させることも考えられます。
最後に、会社で従業員をやとった場合は原則として社会保険に従業員を加入させる義務があるため、保険料支払いを免れるために会社を解散させる人もいますがこれで問題になったり訴えられたりする社長さんもいますので、この目的で会社を解散させることはおすすめできません。